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| ■2007年12月 |
2007年12月13日
多党化時代に苦悶する素人政治家、シン首相
1991年、経済危機に陥ったインドを再生させた立役者の一人が現首相のマンモハン・シン氏だ。大蔵省次官、中銀総裁を務め、およそ泥臭い政治には縁のないテクノクラートだったが、請われて(本人の言では「間違って」)蔵相になり、インドマクロ経済を立て直した。「政治で金儲けするつもりはない」と月給は1ルピーしか受け取らず、インドでは稀なクリーン政治家という評価を得てきた。
しかし16年も政治家をやっていると、クリーンだけでは済まなくなる。世銀の報告によれば、インド全人口の33.5%は一日1ドル以下の収入で生活しているわけで、貧困削減のためには経済成長こそが最大の解決策と自ら述べている。そのためのインフラ整備の一環として、民生用核技術の協力を米国から取り付けたが、閣外協力をする左翼政党の国益を無視した横槍のため、立ち往生している。ところがその左翼勢力も、政権を担う西ベンガル州の州都コルカタで最近起きた暴動のせいで地に落ちた。その威信回復のためか、IAEA(国際原子力機関)の査察を容認したが、どこまで本気か疑問だ。
一方、野党第一党BJP(インド人民党)の内部もがたがたしている。その背後には、バジパイ前首相とよしみを通じたソニア・ガンディー国民会議派総裁によるアドバニ元BJP総裁へのゆさぶりがあるという。
複雑に入り組んだ政治のパズルをシン首相がどう解きほぐすのか。国民を愚弄するかのような政治ゲームでなく、国益に沿った政治判断が出来るか、素人宰相には荷の重い役割が回ってきている。
(島田 卓)-----INDO WATCHER 12月号 後書 |
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| ■2007年11月 |
2007年11月13日
議論好きの国から、アクションの国へ
インド・ルピーが対米ドルで、年初から約11%上昇した。零細輸出業者は悲鳴をあげ、インド政府は救済措置を講じている。
同じようなことが日本でも起こった。ドル高是正のためのプラザ合意(1985年9月2日)で、日・米・英・独・仏の先進5カ国(G5)のうち米国以外の通貨がドルに対して一律10〜12%幅で切り上がった。これを契機に円高が進み、当時の230円台から10年後の95年4月19日には79.75円という異常な円高に見舞われたが、効率化やコストカット、生産性の向上など血のにじむような努力の結果、日本の輸出産業は生き残った。この辺のノウハウたるや、世界に十分誇れるものだ。
インド特有の事情もあり、唯々諾々と日本のやり方を受け入れるわけには行かないだろう。しかし、高等教育を受けられない何百万人という若者が毎年、労働市場に参入してくる。持続的な高度経済成長による貧困撲滅を掲げるインド政府にとって、多くの若者への職場提供が喫緊の課題だ。
アジア唯一のノーベル経済学賞受賞者アマルティア・セン教授は自国民を"argumentative
Indian(議論好きのインド人)"と称している。
インドもそろそろその尊称を返上して、額に汗し、手を汚すアクションの国へと変貌してもよい頃だろう。少子高齢化で働き手確保に奔走する日本企業だが、そうしたインドで日本の出番が回ってきているのではないか。
(島田 卓)-----INDO WATCHER 11月号 後書 |
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| ■2007年10月 |
2007年10月15日
党益を越え、国益・世界益へ
印米民生用原子力協力の取り扱いをめぐって、与党国民会議派と左翼勢力が折り合いを付けかねている。閣外協力する左翼勢力は下院(定数545)で62議席を占める。左翼勢力がその気になれば連立与党は過半数を割り、総選挙に突入せざるを得なくなるであろう。
西ベンガル州を拠点とする左翼勢力は、自州の経済力強化のために外資の誘致に積極的だ。そのためのインフラ整備は喫緊の課題で、中でも電力の安定供給なくしては満足な外資誘致も叶わない。アルワリア計画委員会副委員長は、「インフラさえ整えば、外資は黙っていても来る」とまで言い切っている。
それなのになぜ、頑なに民生用核技術の利用協力に反対するのか。米国との核技術の協力がそれほどまでにインドの独自外交を損なうのか。犬猿の仲であったあの中国でさえインドに対し原子力事業への協力を表明している。まして、地球温暖化ガスの排出削減のためにはインドの積極的な参加が不可避だ。
と考えてくると、左翼勢力は、自党勢力の維持、うがった見方をすれば、共産党左派の代表者であるカラット書記長の権力闘争の具に使っている感がしてならない。与党国民会議派の国民に対する説明も不十分だし、協力を推し進める米ブッシュ政権に残された時間は限られている。国民会議派と左翼勢力は国益と世界益の観点からの議論をもっとすべきではないか。
(島田 卓)-----INDO WATCHER 10月号 後書 |
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| ■2007年9月 |
2007年9月14日
懸念される日印指導者の認識ギャップ
安倍首相が8月22日、インドの国会で大変意義ある演説をした。ムガルの王子、ダーラー・シコーの著書の題名を冠した「二つの海の交わり」という、非常に格調高い、哲学的な内容である。過去の偉人の言葉を随所に引用、日印の歴史を紐解き、あたかも大学の講義用ノートかと思わせる。しかし、かなり長文の演説であったのに、現実的で身に迫ってくるような件は余り含まれていなかった。「あと3年で両国の貿易額が総額200億ドルに達することはたぶん間違いないところだと思います」と具体的数値をあげているが、「たぶん」と心もとない。
昨年11月の中国胡錦涛国家主席訪印時の共同宣言では、2010年までに二国間貿易額を現在の約2倍の年間400億ドルにすると明記している。
一方、マンモハン・シン首相は同日開催された歓迎晩餐会のスピーチで、"We
must make up for lost time(我々は失われた時を取り戻さなくてはならない)"と発言している。日印関係はその可能性を十分生かしきれておらず、より具体的なアクションが必要で、それへの日本のコミットメントが欲しい、ということではないか。
インドは増え続ける若年労働者への職場提供が喫緊の課題で、それが出来ないと「豊富な人口が悪夢をもたらす」(レディ・インド中銀総裁)ことになる。美辞麗句より、具体策が欲しいインド。双方のトップに、認識のズレがないか心配だ。
(島田 卓)-----INDO WATCHER 9月号 後書 |
| ■2007年8月 |
2007年8月16日
カーストとインド・ビジネスの関係
インド人史上初の女性大統領が誕生した。前ラジャスタン州知事のプラティバ・パティル氏(72歳)だ。
前大統領のカラム氏はイスラム教徒で、インドミサイルの父といわれる科学者、そして、その前の大統領は被差別カースト出身のナラヤン氏であった。ナラヤン氏は大統領就任時、「わが国の憲法の核心は、社会主義の実現にある。」と語っている。
大統領選出には政治的配慮もたぶんに作用すると思われるが、そうした点を差し引いてもインド人の柔軟性の一面を示していよう。
ビジネスにおいても同様なことが言えるのではないか。インド第3位のIT企業、ウィプロのプレムジ会長はイスラム教徒だが、「ムスリムであることがビジネスをやる上で障害になったことはない」と明言している。このあたりは、古代ローマ帝国の社会とどこか類似している。
古代ローマ帝国では、奴隷となった他国民であっても、努力と能力しだいでいかなる人物もチャンスをつかむことができた。インドにおいても、ビジネスに関しては古代ローマ帝国と同様の考え方が機能する。いくら本を大量に読んでも、どれほどカースト制度に習熟したとしても、ビジネスにはあまり役に立たない。
それよりも、本人本位を貫けば、カーストも道を明けてくれる。その上で、日本人だ、インド人だなんて言うのもやめたらいいと思う。
(島田 卓)-----INDO WATCHER 8月号 後書 |
| ■2007年7月 |
2007年7月11日
日印の協力とアジアの未来
安倍首相が提唱している「美しい国」とは、日本を愛そう、愛せる国にしよう、という考えだと思われるが、その際、もう少し幅を広げて「美しいアジア」的発想を入れてみたらどうだろうか。
世界の人口が66億人になり、印中だけで約37%を占める。他のアジア諸国が公害まみれであれば、ひときわ日本の美しさが際立つという不謹慎な発想ではないとは思うが、そうなったら大変なことだ。
同様なことがインドにも言える。従来から非同盟の盟主として、大国には与しないといった姿勢を保ってきたが、BRICsの一角を占め、ここ数年来の高度経済成長も手伝い、他国がインドをもてはやすものだから、大国意識だけが鼻につくようになってきた。
インドは今、新興大国としての自覚を持ち、欧米諸国の保護貿易主義や地球温暖化問題などで、「ここまでだめにしたのはあなたたち」などと、先進国を非難するだけではなく、相手への歩み寄りと応分の責任分担の明確化がインドに課せられた使命ではないか。
本文を書いている最中、7月2日に石炭火力発電のCO2削減が可能な日本の先進技術をインドに提供する共同声明が発表された。その種の協力分野はあまたあるに違いない。インドはそうした先進技術の恩恵を享受する一方、インド独自の国際貢献を真摯に手掛けるべきである。日本にはそれを支援するだけの技術力がある。
(島田 卓)-----INDO WATCHER 7月号 後書 |
| ■2007年6月 |
2007年6月12日
インドが抱える課題
国民会議派を中心とした統一進歩連合(UPA)政権が成立して3年が経った。発足当時はセキュラリズム(非宗教主義)に立脚した経済成長と貧困削減を掲げ、それなりの成果をあげてきたといえる。
この間の経済成長率は8%を上回り、外貨準備高は2,000億ドルを超え、世界経済に与える影響も増してきた。最近発表された米マッキンゼー調査では、中間層の拡大が勢いを増し、今後20年間で5億人もの消費者を生み出してドイツを抜き、中国と並び称される巨大市場を形成すると予測している。
しかしながら、未来は無条件で実現するものではない。例えばアルワリヤ計画委員会副委員長が主張するように、GDP5%弱程度のインフラ投資を8%程度にまで拡大する必要があるし、外資への一層の門戸開放も必要だ。
その際、一段の経済自由化に抵抗を続ける閣外協力左派政党をどう説得し、それと並行して、悪名高いインドの官僚機構をどう変革していくかが課題となる。
これまでのインドの経済発展は、教育を受けた勤勉な人的資源による改革の推進があったればこそだが、一層の発展を望むのであれば官僚機構も巻き込んだ徹底した改革の推進が必須である。
中東のドバイの発展が目覚しいが、かなりの人口をインドからの移民が占める。自由な経済環境の下での、インド人ダイナミズムが発揮された格好の事例だ。いま必要なのは、そんなダイナミズムをインド国内でも発揮できる環境づくりなのだ。
(島田 卓)-----INDO WATCHER 6月号 後書 |
| ■2007年5月 |
2007年5月12日
日印「連携」のあり方
『インドビジネスQ&A』(本誌P.34)の質問「インドのM&Aの展望」でバルガバ氏は、「日印企業の連携を強めるには、M&Aとは違う方法を模索するほうがよい」と回答している。これは多くのことを示唆する、含蓄に富んだ言葉だ。
日本にあってインドにないものは何か。答えはバルガバ氏も指摘するように、「先端技術と効率的な生産現場を管理する能力」であろう。
プリンストン大学のポール・クルーグマン教授は、約10年前に発表した『まぼろしのアジア経済(The Myths of Asia's Miracle,1994) 』で、アジア各国の経済成長は、生産要素のうちの労働力と資本の圧倒的な投入の伸びによってもたらされていることから、長期にわたり持続できるものではないと断じている。どうすれば持続可能なのか。それは経済成長を支えるもう一つの要素、全要素生産性(TFP=Total Factor Productivity)を取り込むことである。
すなわち、インドが今後、持続的経済成長を望むなら、投入量の拡大にのみ頼るのではなく、技術進歩や効率性の向上を伴う体制に移行する必要がある。
インドが持つ膨大な若年労働力は、それ自体大きな成長牽引力である。しかし、インドがそれだけに頼り、TFPの向上をおろそかにしていると、1997年アジア危機のインド版を引き起こしかねない。
それを阻止するための防波堤の構築には、その技術を持つ日本企業と協業することが早道である。日本企業はこの辺を十分認識してインド企業へのアプローチを考えたらどうだろうか。
(島田 卓)-----INDO WATCHER 5月号 後書 |
| ■2007年4月 |
2007年4月11日
SAARC会議の示す方向性
インドやパキスタンなど8カ国で構成する南アジア地域協力連合(SAARC: South Asian Association for Regional Cooperation)の首脳会議が3日と4日、ニューデリーで開催され、日本からはオブザーバーとして麻生外務大臣が出席した。他に、米中なども同様の資格で参加している。
同会議でインドのマンモハン・シン首相は、「現在、南アジアではかつてない経済と政治の変革が起こっている」と述べると共に、「南アジアが一つになり、繁栄と協力、そして平和と開発を成し遂げていくべきときが来た」と語った。その上で、南アジア自由貿易協定(SAFTA)の盟主としての地固めに、一部加盟国からの輸入品に対する関税の年内撤廃と、輸入品のネガティブリスト記載品目数の削減も明言した。その一方で、印パ間の関係改善の証となるイラン産天然ガスをパキスタン経由でインドが輸入するパイプラインの早期完成や航空便の増便、ビザの発給条件緩和などでも合意している。
インド外交のベクトルはSAARC、アジアそして世界へと向かう。その際、インドはアジアの他の2大国、日本と中国との外交が従来の二者択一ではなく、両てんびん外交となるだろう。そのとき日本はどういった外交ベクトルで対応するのか。まさか二者択一はあるまい。早目に手を打っておかないと、日本の専売特許、「too
late(遅すぎ)」がまた現実になってしまう。(島田 卓)
-----INDO WATCHER 4月号 後書 |
| ■2007年3月 |
2007年3月12日
果実再配分への配慮
チダンバラム蔵相が2月28日、来年度予算案を国会で発表したが、「2007年度予算案を発表させていただき、光栄です」と言っただけで、淡々とその後を続けた。ちょうど10年前の同じ日、同じくチダンバラム蔵相(=当時も蔵相だった)が発表した予算案は「夢の予算(Dream Budget)」と称され、各界から賞賛を浴びた。そのため、今回もどんなサプライズがあるかと期待した人は多かったようだ。しかしながら、発表された予算内容は至極まともなもので、一部の関税引き下げを除けば特筆すべき項目はなく、サプライズを見つけることも困難だった。
インドの経済成長率は9%を超え、二桁成長も視野に入ってきているが、一般庶民の実感は、外部から見るほどのものではないようだ。自殺する農民は跡を絶たず、満足な教育を受けられない若年層も多数いる。インフレ昂進は一般家庭の台所を直撃し、劣悪な衛生環境の中で何とかその日暮らしをしている人たちも多い。彼らをいかに救済していくかが、大きな社会問題としてクローズアップされている。
経済発展の恩恵に浴していない層の募る不満をいかに解決していくか。ある程度経済自由化による果実を得たインドが、いまや、その分配に腐心する時代を迎えたと言える。その舵取りに失敗すれば、マンモハン・シン内閣も崩壊するだろう。今回の予算はそうしないための政治的な配慮を施した予算であったと思われる。(島田 卓)
-----INDO WATCHER 3月号 後書 |
| ■2007年2月 |
2007年2月15日
エネルギーめぐりインドとロシア、中国が大接近
1950年1月26日にインド憲法が施行されたことを祝い、毎年1月26日は国民の祭日(インド共和国記念日)となっている。当日は丘の上の大統領官邸からインド門まで、直線にして約2キロを各州のパレードやインド軍隊などの行進が続く。例年外国の国家元首を招待するが、今年はロシアのプーチン大統領だった。その前日には重要な両国首脳会談が行われている。戦略的相互協力の確認をベースに、原発関連でロシアの協力姿勢が目を引いた。ロシアはインドに対して新たに原子炉4基の建設を約束した他、インドが米国の核技術の導入に必要な原子力供給グループ(NSG)からの承認を得られるように協力する姿勢も見せた。既に、「サハリン1」(ロシア・サハリン沖石油・天然ガス事業)からの原油輸入が昨年12月にスタートしている。また、中国は昨年11月胡錦濤国家主席がインドを訪問、民生用の原子力分野での協力を約し、共同宣言には2010年までに二国間貿易額を400億ドルに拡大するとの目標を明記した。その翌月北京で、印中はエネルギー関連で協力する覚書を結んでいる。この印・ロ・中3カ国による外相会議が今月ニューデリーで開催される予定だ。自国で消費する原油のほとんどを海外に依存する日本にとって、エネルギーの安定確保は死活課題だ。日本はこうした印・ロ・中の協力関係に楔を打ち込んでおかないと、大変なことになりはしないか。持てる油を失いその首を断たれた者がいた。これを「油断」と呼んだ。古代インドの書「ラーマーヤナ」に出てくる。まさに「油断大敵」である。(島田 卓)
-----INDO WATCHER 2月号 後書 |
2007年2月7日
米国で活躍するインドの女性
昨年10月、米清涼飲料大手ペプシコの最高経営責任者(CEO)に就任したのがインドラ・
ヌーイさん(51歳)。同社で始めて女性がトップに立った。今、米国でもっともパワフルな女性の一人である。インドの大学を卒業後、米エール大学で修士号を取得、米国の有力会社数社を経験した後、1994年にペプシコに参加している。その彼女が5日、今度はペプシコの会長に選出された。現会長のレインムンド氏(58歳)が今年5月2日を以って退任する後を継ぐ。ペプシコの売り上げは320億ドル(約3兆8千億円)を超え、女性がトップを務める米国企業では最大手の部類に入る。インドの普通の家庭に生まれ大学までインドで過ごし、その後米国に渡り同国大手企業のトップに上り詰める、それも51歳の若さである。異国でがんばる若き優秀なインド女性もすごいと思うが、そういった人物を受け入れ、とてつもない地位に就けてしまう米国ビジネス界のダイナミズムに脱帽といったところか。
一方、政治の世界でもインド人女性が頭角を現している。こちらは、渡米し結婚、そして離婚したインド人の母親が、生活保護を受けながら育てた女性が、来年の米大統領選に立候補を表明したヒラリー・クリントン上院議員の選挙参謀に指名された。ニーラ・タンデン(Neera
Tanden)さんがその人で、1996年にエール大学ロースクールを卒業、クリントン元大統領の政策立案を手がけ、クリントン・ゴア・コンビの大統領キャンペーンにも加わっていた。その後大統領官邸の報道部門に移り、民主党政策立案局の補佐官にまで昇進した。マサチューセッツ州知事を務め、1988年の大統領選で民主党候補として立候補するも共和党のブッシュに敗れたマイケル・デュカキス
( Michael Dukakis )のキャンペーンにも加わり、そこで知り合った男性と結婚、現在は二児の母親でもある。クリントン元大統領にも夫妻で気に入られ、ヒラリー夫人の評価も高かったようだ。はたしてタンデンさんが来年の米大統領選挙戦でどんな采配を振るうのか、外野席での楽しみが増えた。
(島田 卓) |
| ■2007年1月 |
2007年1月18日
あきれた決定
首相府からの指示で、昨日、経済特区(SEZ)の認可委員会(BoA)開催が無期延期となり、SEZの認可業務が実質的にストップした。既に認可取得済みのSEZ案件についても再審査が行われることになるという。
基本認可を取得しているが官報で公表されていない163件や、申請中の約300件が宙に浮くことになる。インド経済や国益にとって大きな打撃となることは間違いない。
個々には種々問題を抱えるプロジェクトはあろうが、全体の進行を止めるというのはインド政府の暴挙と言わざるを得ない。背景にはウッタル・プラデシュ(UP)州の州議会選挙が迫っており、与党としては国民感情に配慮した「人気取り政策」をせざるを得ないのかもしれないが、それをもって今回の決定が正当化されるものではない。
確かに、不正なSEZ認可取得行為があることは間違いない。例えば、工場建設を条件に農地の工業用地への転換許可を得て取得用地の価格を吊り上げ、そこに掘っ立て小屋を作っただけで転売禁止期間の2年間をやり過ごし、その後転売して巨万の利益を得るといった事例がある。
しかし、真面目にプロジェクトを展開しようとしている企業が、そういった輩と十把一絡げにされたのではたまらない。
そうさせないためには、認可業務に絡む不正行為が排除されるシステムを作り上げ、政府は極力認可作業から手を引くことだ。
昨日の当地有力経済紙The Economic Times(印刷版)に、プラフル・パテル民間航空大臣が、「インドには十分な資金とビジネスがある。(そんな時に)政府が何でも自分たちでやりたがると問題が生じる」と述べている。分かっている人は、分かっているのだが、政治が絡むと本筋が通らなくなる。
ということで、インド投資を行う人や企業は、シン首相が「馬鹿なことをやっている」ことは先刻承知であることを分かっておく必要がある。一喜一憂する必要はない。UP州の選挙が終わってほとぼりが冷めれば、認可委員会は再開されるはずであるから。(島田 卓)
-----INDO WATCHER 1月号 後書 |
2007年1月17日
未開拓マーケットへのコミットメント
クレディ・スイスは、インドの今年の経済成長率が10%に達し、中国(9.9%)を抜いて世界最高の成長を記録すると予測する。世界的に著名なヘッジファンド投資家のジョージ・ソロス氏も「(投資先として中国より)インドにより関心がある」と発言した。その一方で、5年前は日本と同じ40億ドル程度だった印中の年間貿易額は200億ドルに迫り、エネルギー確保に関する相互協力で合意した。米国は、新法をつくってまで「米印原子力協定」を成立させた。これらはすべて昨年12月の出来事である。
もう一つ大事なことがあった。マンモハン・シン首相の訪日である。しかしこちらはなぜか影が薄い。具体的な日印関係のあるべき姿がお互いに明確に描ききれていないからではないか。インド側は日本企業との関係強化に意欲を見せてはいるが、日本サイドにそれを受け入れる素地が出来ていない。それは日印の人間関係が相互性に欠けているからではないか。
中国から日本への留学生8万人に対し、インドからは300人程度だ。「人的資源への投資こそが経済活性化のカギ」とロバート・ライシュ、ハーバード大学教授は言う。少子高齢化に向かう日本と、自国産業だけでは雇用しきれないほどの若年労働者が生まれるインド。未開拓のマーケットだが、開拓するにはそれなりのコミットメントが必要となる。
今、日本に求められているのはその決意ではないか。(島田 卓)
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2007年1月16日
交差点のおまわりさん
デリーからノイダに車で移動していたとき、混雑する交差点で一人のインド人青年がなにやら奮闘しています。車やバイクやトラックやらがてんでに道を横切ろうとして、収拾がつかなくなっているのを見かねたのか、交通整理のおまわりさん役を勝手にやっちゃってるんです。

同乗していたインド人仲間に「凄いね、インド人は自発的にここまでやるんだ」とほめてみました。
相方いわく「それほどインドの交通事情はひどいのさ。インフラが整備され、交通規則がきっちり守られてる日本では必要ないでしょう」。
そうかもしれないが、何も好き好んで排ガスが充満している交差点で、頼まれもしない交通整理などするような物好きは日本にはいないと思うのですが。で、こういった光景などはインド人のDNAをよく物語っているのではないでしょうか。
そこでクエッションです。次に述べられているのは、どこの国の人のDNAでしょうか。
自分が良いと思ったことは人様がどう思おうがかまわないからやる。 自分の行動が人様からどう思われるかを考えてからやる。
(回答) 前者がインド人のDNA。 後者が日本人のDNA。
なお、自分は前者だと思う人がいて、どうも現在のビジネスは今一だということでしたら、一度インドビジネスを手がけて見てはいかがでしょうか。
ただし、成功するかどうかは保証しかねます。
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2007年1月9日
米政府の妥協―対印特恵関税期間を延長
米国政府は昨年12月21日、インドに対し従来から許容してきた一般の関税率より低い税率を適用する制度、一般特恵関税制度(GSP)の2年間の延長を決定しました。同GSPは昨年末が期限でしたが、期限切れ前に更新されたのは今回が初めてです。
ブッシュ米政権は経済力をつけてきているインドを含む13カ国について、特恵税率は最早必要ないとの立場を明確にしていましたが、インド政府は米国内でのロビー活動などを通し、今回の更新を実現してしまいました。ちなみに、05年におけるインドの対米輸出額188億ドルのうち、GSPによる輸出額は約41億ドルと、全体の2割強を占めています。この特権が温存されたわけです。
新興勢力として力をつけ、いまや経済大国並みの力を誇示するインド。その一方で、自国の輸出拡大のためGSPの継続を要求するインド。一見矛盾に満ちた行動のように見て取れますが、あくまでも自国の利害を重んじるインドのしたたかさが垣間見えます。一方の米国は、自国の利害を考え、インドを自国陣営に組み込もうと、「核技術の供与」を初め、インドとの交渉ごとにおいて、多少の妥協はかまわない、といったスタンスを取り続けています。
「政治家や外交官は命を賭けて自国の利益を守るのが使命。したがって、外交をするのではなく、外政をやる必要がある」とは、『ローマ人の物語』を完成させた塩野七生さんのエッセー『ローマの街角から』に出てくる表現を私流に読み替えたものです。
外で交わる(外交)のは手段であって、目的ではない。交わって、交渉して、自国の利益を守る、これが外政である。インドの政治家や外交官は外政に徹しているように見える。
そのしたたかさに学ぶ点は大いにあるのではないでしょうか。 |